多くの中小製造業では、ITの専門部署は存在せず、IT専属のスタッフもいない場合が多い。単一業務内でITツールを導入する場合や、個々の業務担当者が個々にITツールを使いこなすということであれば、それほど大きな混乱はないだろう。しかし、異なる部署間や、全社的に情報を共有、連携させたいような場合には、どこかの部署が推進役となり、そこで何らかのとりまとめを行う必要がある。

ITカイゼンを実施し、業務の流れ、情報の流れを部門横断的にカイゼンしていくためには、こうした部門間の調整や連絡を担うタスクチームを作ることが望ましい。そして、個別のカイゼン事例を、当事者間だけのものとせず、その成果や手順をできるだけ多くの関係者に披露し、成果を共有し見える化することが有効となる。これは担当者のモチベーションにもつながり、また相互の刺激にもなって、ITカイゼンの思想が全社的に広がることにもなる。

ITカイゼンの取り組みは、つねに現場視点から、情報システムを自己増殖させていくような取り組みであり、大企業や中堅企業の場合は、情報システムの内部統制の面で課題も多い。したがって、現実的な取り組みとしては、企業の中長期的なグランドデザインの中で、トップダウン的な枠組みを作り、そこであるべき情報の品質や精度を保証したうえで、個別業務の自由度をあたえるといった方法が望ましい。また、ITカイゼンのプラットフォームをあらかじめ整備し、個別におこなったカイゼンの内容を、全体としてきちんと把握できるような体制をとっておく必要もある。

大企業や中堅企業の場合は、特に、ITカイゼンを進めていく上で、既存のITシステム、あるいは基幹システムとの連携をとっていく必要がある。このような場合には、ITの専門家を社内、社外から調達し、それらのITシステムとのインタフェースの設計やデータ形式などの調整を事前に行っておく。各業務担当者がITカイゼンを進める中で、混乱なく、重複することなく、業務情報の定義が行えるようにするためには、実は非常に高度な標準化技術、モデリング技術が必要とされる。こうした部分はぜひ、外部のITベンダーやコンサルタントに期待したい。

> 8.「これからの課題と展望」